【働き方改革】公約比較-15の争点- 2017衆議院議員総選挙

衆議院総選挙公約比較-15の争点-シリーズ
今回は【働き方改革】です!

働き方改革とその背景

そもそも「働き方改革」という言葉自体が注目されるようになったのは、2012年に発足した安倍政権の掲げる経済政策「アベノミクス」において、この働き方改革が主要な軸の一つにおかれたためです。

当時の政府は、2016年9月に、「働き方改革」の具体策をまとめる「実現会議」の初会合を首相官邸で開き、一部法改正も行ってきました。また、そうした動きのさなか、2016年12月に電通女性社員の自殺が労災と認められたことも社会的には大きな波紋を呼びました。

背景にあるのは、日本の労働生産性の低さです。2014 年の日本の労働生産性は、OECD 加盟34カ国の中で21位であり、主要先進7カ国でも、最も低い水準でした。そしてこの原因となっているのが、長時間労働や残業といった高度成長期から続く慣習です。少子高齢化で人口や労働力人口が減少している中で日本経済が強くあるためには、こうした慣習を是正していかなければいけないとなったわけです。

日本の「働き方」は本当に問題なのか

では、日本の「働き方」は何が問題なのか、3つの視点から見てみましょう。
働き方改革の争点は主に以下の3つに分けられます。

①賃金格差(正社員/非正社員・最低賃金)の是正
②残業時間の上限
③女性活躍の推進

▼①賃金格差(正規/非正規・最低賃金)の是正
非正規労働者の賃金水準は、欧州諸国においては正規労働者に比べ2割低い状況ですが、我が国では4割も低くなっている現状があります。その差は2016年の時点で月約11万円です。
また,日本の最低賃金は、もっとも高い東京で907円、もっとも安い沖縄や高知などでは693円、全国を平均すると798円になります。物価などのことを考えると一概には言えませんが、これは欧米諸国1に比べて比較的低い数字と言えます。

(参考1)
最低賃金については地域差などもありますが、フランスは9.67ユーロ(約1185円)、英国は6.7ポンド(約1039円)、米国は各州を平均するとだいたい8ドル(約860円、都市部になると金額は跳ね上がり、主要都市では時給15ドル)となっています。
※円換算は為替により変動があります。

参考:
THE PAGE:日本の最低賃金は今いくら? 時給1000円実現しても、欧米諸国に比べ低水準

 

▼②長時間労働の是正
国際労働機関(ILO)や総務省のデータ(2013年)によると、週49時間以上、働いている人の割合では、日本は21.7%に対し、米国やイギリス、フランスは、それぞれ16.4%、12.3%。10.8%となり、この数値に対し日本の長時間労働者の割合はほぼ倍になります。

また、厚労省が過労死のリスクが高まると位置づける1カ月の残業が80時間の「過労死ライン」を超えた正社員がいる企業は22.7%に上りました。

 

▼③女性活躍の推進
平成25年の女性雇用者数は2,406万人。雇用者総数に占める女性の割合は43.3%となっており、比較的上昇がみられる。一方で 女性の年齢階級別就業率は20代や30代の結婚・出産の時期の離職率が高い、M字カーブを描いています。また、就業率と潜在的労働力率の差は大きく、就業を希望する女性の数は315万人にのぼることから、働きたくても働けていない女性が一定数いるのは事実です。さらに、管理的職業従事者に占める女性割合は先進国の中でも顕著に低く、約11%となっています。
また、政治分野においての数字を見てみると、日本の女性議員数は、世界でも最低レベルで、国会議員717人のうち、女性は94人となっています。これは、各国の議会でつくるIPU(列国議会同盟)のランキングでは、衆議院が193カ国中157位の数字です。

 

こうした現状に対する各党の政策をCHECK

▼①賃金格差(正社員/非正社員・最低賃金・職業別)の是正
●同一労働同一賃金の導入(幸福実現党を除く全政党)
正規/非正規社員の賃金格差をなくすため、幸福実現党を除き、各党共通して同一労働
同一賃金を主張しています。

同一労働同一賃金実現により、賃金格差を無くせるだけでなく、全体の賃金水準を上げ、消費を活性化させることによる経済の発展が見込まれます。また、正規社員と同じように仕事をしているのに非正規社員であるという理由だけで低い賃金しかもらえないという理不尽を無くすことも期待出来ます。

一方で、幸福実現党は、政府による過度な⺠間への介⼊姿勢に反対として、同一労働同一賃金には反対しています。専門家の中にも、これを導入することで非正規社員の賃金が上がるが、その分だけ正規社員の賃金が下がるという傾向になり、全体の賃金水準を引き下げる結果にはなりかねないという声もあります。

また、この制度は日本の年功序列制度とも密接に絡んでいます。欧米と違い入社の際にポストを明確にしない採用形態をとっている日本では、その代わりに終身雇用と年次による給料増額を保証してきましたが、その仕組みがこの制度の導入で揺らぐため、企業は容易には採用できないという見方もあります。さらに給料の違いが能力の違いや成果の違いによるものなのか、単純に正規/非正規によるものなのかなどを判断しづらいという問題点もあり、日本維新の会では、こうした日本特有のポストや年齢によって給料が決まる職能給ではなく、従事する仕事の内容や職務の価値で賃金を決定する職務給の導入を掲げています。

●最低賃金の引き上げ(自民党,公明党,共産党)
同一労働同一賃金に加え、自民党・公明党・共産党は最低賃金の引き上げを主張しています(ただし、それぞれ金額は異なり、自民党・公明党は将来的に1000円、共産党は最初に1000円、将来的には1500円を目指しています。)

こちらも同一賃金同一労働と同じように平均賃金の引き上げが狙いですが、一方で、ベーシックな経済学の議論では、最低賃金の導入によって一部の労働者の賃金が増えることが低賃金労働者の失業につながってしまうという意見もあります。

 

▼②残業時間の上限
●長時間労働の是正(全政党)
この点について、自民党・希望の党・日本共産党・立憲民主党・日本のこころ・社民党は、長時間労働是正を掲げています。希望の党については労働時間の上限を設けることを明記、日本共産党・社民党は上限の具体的な時間まで明記しています。また、公明党・幸福実現党は時間外労働の短縮を明記しています。

このような長時間労働の是正にはいくつかメリットがあります。一つには、男女のワークライフバランスが図られることによる、少子化是正への貢献や、女性の社会進出促進です。その他にも、生産性の向上による日本経済の活性化も期待されています。一方でこうした問題は、単純に退社時間を定める、といったことだけでは解決されない問題です。

企業が形式的に長時間労働の是正を導入することによって、かえって社員の人が少ない時間でのパフォーマンスを求められすぎて追い込まれたり、結局家に帰って仕事をし続けるということになる可能性があります。テレワークの推進や人事制度の改革などと合わせた議論が必要という見方もあります。

この長時間労働の是正につながる方策として、日本共産党・公明党・社民党は、勤務間インターバル制度の導入を掲げています。これは、勤務と勤務の間の時間、つまり「休息期間」をきちんと確保しようという規制です。実際に導入されているEUの例では、原則として「24時間につき連続して11時間の休息期間を設けること」が義務付けられています。「休息期間」としてあらかじめ11時間分を確保することにより、仕事に関する1日の拘束時間は13時間が上限とされ、結果として1日当たりの労働時間を制限することができるというわけです。

一方で、翌日の出勤時間を遅らせることができる仕組み上、残業を助長しかねないという指摘や、インターバルが取りにくい24時間営業の飲食店やスーパー等、不規則労働が常態化している業界や企業などとの連携をどうとっていくかに課題があり、一元的に導入することにはリスクもあると言われています。

 

▼③女性活躍の推進
これについては、まだ議論が不十分であることから、争点が定まっておらず各党政策が分かれています。

●政治分野における男女共同参画推進法(自民党)
自民党は、政治分野での男女共同参画推進法の早期成立を目指すとしています。これについては、多くの議論があり未だ成立に至っていません。「男女の候補者ができる限り均等となることを目指す」とされた修正案に対し、「能力のある人は自力で這い上がってくる」「国の話ではなく政党が努力する話」といった反対意見が出ています。

●子育てと仕事/介護と仕事の両立(自民党、希望の党、公明党、日本維新の会、社民党、日本のこころ、幸福実現党)
子育てと仕事の両立への対策として、希望の党は「待機児童ゼロ」の法的義務付け等を掲げています。女性の社会進出が進むにつれ、保育所など子どもを預ける施設の需要は増えています。一方で、保育士の数は依然として少なく、都市部などでは保育所を作るコストから作るのが難しい現状もあります。それに対する解決策として、日本維新の会は保育所とオフィスを複合した「準・在宅ワーク」の拠点の整備、幸福実現党はテレワークの推進、日本のこころは育児休暇制度等の制度・運用の充実を掲げています。これらについては、企業の協力が欠かせず、まずは企業の中の意識を変えていく必要があると言われています。

また、日本共産党・立憲民主党・社民党は男女の雇用や昇進における差別、賃金格差の是正を訴えています。女性の結婚や出産をきっかけとした離職がいまだに多く、なかなか復職出来ない人が多い現状を受け、そうした差別をなくしていこうというものです。これについては、「差別」と言えるかどうかの境界があいまいで、明確な法規制などが難しいとされています。その他にも、公明党は自民党と同じく、男性の意識改革を公約に入れています。

 

まとめ

賃金格差・残業時間の上限については、争点も明確になっていますので、今後も議論を続けていくことになるでしょう。一方で、女性活躍推進については、まだまだ争点が定まっておらず、何が根本的な原因で何から手をつけていくべきなのかを議論する必要があります。

そしてこの働き方改革すべてにおいて、政府がどこまで法規制をし、企業に裁量を任せるのか、政府の方針をどのようにして企業に浸透させていくことが出来るのかといった経済界との連携がカギになって来るでしょう。

また、働き方についての問題は、すべての人に、そしていつの時代も普遍的な課題です。政府が法制を整えることももちろん大事ですが、それだけではどうにもなりません。私たち自身が「働く」ということをどう捉え、どう改善していきたいと思うか、そうしたひとりひとりの意識が何より大事だと考えます。まずはあなたの職場から、考えてみてください。あなたの意識変化や行動の変化で、変えられることがあるかもしれません。

 

参考資料

BuzzFeed「能力のある人は自力で」女性の政治参画、推進法案に自民党内で異論 あなたはどう思う?
日本経済新聞「残業、なぜ減らない?」 第293回
正社員と非正社員の賃金格差は?…雇用形態別の平均賃金をグラフ化してみる(2017年)
正社員と有期雇用労働者の賃金格差
ニッセイ基礎研究所ー今なぜ働き方改革が進んでいるのだろうか?-データで見る働き方改革の理由-
NECネクサスソリューションズー「月刊総務」編集長が語る、総務から始める働き方改革(第3回)いよいよ始まる、働き方改革そもそも、なぜ働き方改革が必要なのか
レポート/あしたのチーム総研ー電通の労働問題と働き方改革の背景・意図日系ビジネスONLINE-「同一労働同一賃金」の目的は格差是正ではない
くらしと仕事ー長時間労働を解消すると期待できる様々な効果とは〜働き方改革実現会議での提言より〜
人と仕事研究所ー長時間労働と「勤務間インターバル規制」

この記事は全党の公約を参考に執筆しました。公約へのリンクはこちら

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ABOUTこの記事をかいた人

毛利 裕一

事務局 WEBデザイナー
早稲田大学政治経済学部国際政治経済学科2年。POTETOの誕生日と同じ12月1日生まれ。 このホームページの制作者。 フランス大統領選に行ったり、主権者教育に取り組んだり、色々なデザインをしたり、事務局での仕事を行ったり。